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The Truman Show(邦: トゥルーマン・ショー)[1998]


監督 ピーター・ウィアー

脚本 アンドリュー・ニコル

製作 エドワード・ S・フェルドマン

   アンドリュー・ニコル

   スコット・ルーディン

   アダム・シュローダー

総指揮 リン・プレシェット

出演 ジム・キャリー

   エド・ハリス

   ローラ・リニー

   ノア・エメリッヒ

   ナターシャ・マケルホーン

   ホランド・テイラー

   ブライアン・ディレイト

   ブレア・スレイター

   ピーター・クラウス

   ハイジ・シャンツ

   ロン・テイラー

   ポール・ジアマッティ

   アダム・トメイ

   ハリー・シェアラー

   ウナ・デーモン

   フィリップ・ベイカー・ホール

   フィリップ・グラス

   オーラン・ジョーンズ

   ユウジ・オクモト

あらすじ

 離島・シーヘブンで、保険会社に勤めるトゥルーマン・バーバンク(ジム・キャリー)は、「おはよう! そして会えない時のために、こんにちはとこんばんは!」が口癖の明るい青年である。彼は生まれてから1度も島から出たことがなかった。それは、父と一緒に海でボートを漕いでいたときに「嵐が来るぞ」という父の警告を無視して船を進め、嵐を回避できず海に投げ出された父親を亡くしたことで、水恐怖症を患ってしまったためであった。

 ある日、彼がいつものようにキヨスクで新聞を買ったあと、雑踏の中ひとりのホームレスの老人とすれ違う。それは幼い頃、海に沈み亡くなったはずの父親だった。しかしその直後、老人は瞬く間に何者かに連れ去られてしまう。彼はこの出来事をきっかけに、自分の周囲を不審に感じ始める。

 実は、トゥルーマンは生まれたときから人生の全てを24時間撮影されていた。彼は「アメリカ合衆国公民」ですらなく、彼の人生は全てそのまま「リアリティ番組」『トゥルーマン・ショー』として世界220か国に放送されていた。彼の住む街は万里の長城に匹敵するドーム内に作られた巨大なセットで、太陽や月、星々も機械仕掛けの照明装置に過ぎず、雨や雷鳴などの気象も人為的なからくりであり、そして何よりトゥルーマン以外の人物は全て俳優なのであった。もちろん死んでしまったという父も本当の父ではなく俳優であり、父親役の俳優は実際は死んでおらず、のちに「感動の再会」を果たすことになる。

 この番組ではCMは入らず、番組中で商品の宣伝が行われている、いわゆるプロダクトプレイスメントである。例えばトゥルーマンの親友マーロン(ノア・エメリッヒ)は、いつも缶ビールをカメラに向けてビールを宣伝している(もちろんこれは自然な形で行われておりトゥルーマンは気付いていない)。トゥルーマンの妻メリル(ローラ・リニー)も、草刈機や万能ナイフなどを日常会話の中でさりげなく宣伝していたが、あるとき不自然にココアの宣伝をしてしまう(「新製品のこの『モココア』をお試しあれ。ニカラグアの大地で取れた天然のカカオ豆を使ってて最高の味よ。人工甘味料は入ってないわ。」と、日常会話としては非常に不自然で話がかみ合っていなかった)。これを聞いたトゥルーマンは、周囲への疑いをさらに深めていく。

 そんな妻との乾いた生活の一方で、トゥルーマンは学生時代に出会ったローレンという女性のことが忘れられないでいた。当時ローレンは、虚偽の世界に生きる彼を思い、「ローレン」とは役名で本名はシルヴィアであるということ、そしてこの世界が全て偽りであることを伝えようする。しかし「シルヴィアの父」を名乗る何者かによって阻止され連れ去られてしまう。「島を出るのよ!私を探して!」。ローレンのこの言葉を最後に、それ以降トゥルーマンと会うことはなかった。

 自分の世界に疑念を深めたトゥルーマンは妻の働く病院に忍び込むが、そこでは素人同然の医師たちによる手術が行われていた。医者も偽物なのだと気づいたトゥルーマンは妻を連れて島からの脱出を考え、ローレンがいるというフィジー島へ行こうとする。だが、不可解なトラブルが続発して島の外に行く事ができず、さらに会ったことのない人間から「やあ、トゥルーマン」と呼ばれて混乱に陥る。脱出に失敗し落ち込むトゥルーマンを慰めようと、マーロンが死んだはずの父との再会を演出する。テレビの前の視聴者達は感動に涙するが、トゥルーマンはそのわざとらしさから島が作り物の世界であることを確信する。

 やがてトゥルーマンはカメラの目を盗んで自宅の地下室から脱走し、ボートに乗り込んで島の外へと漕ぎ出す。トゥルーマンの行動に気づいたプロデューサーは、トゥルーマンを救おうとするシルヴィアの制止を振り切って、トゥルーマンを嵐の中に放り込む。水恐怖症を克服して世界の端まで向かうトゥルーマンを、視聴者達はかたずを呑んで見守っている。

 ついに世界の端にある扉にたどり着いたトゥルーマンは「会えない時のために、こんにちはとこんばんは!」とカメラに向かって叫ぶと、外の世界へと踏み出し、画面から去っていった。

 そして視聴者達が『トゥルーマン・ショー』に拍手を送った後、「次の番組はなんだ?」とチャンネルを切り替えるシーンで本作は幕を下ろす。

 アリティを求める視聴者とギリギリのところでそれに応えようとする番組制作者・出演者を、極端な設定ながら面白可笑しく、優しい眼差しで描いた、示唆に富む作品です。

 自分の生活が連続テレビドラマとして24時間生中継されており、自分の住む町は巨大なセットで、周囲の人間はすべて俳優と、パラノイアを描くような奇異な設定ですが、この作品はサイコ・スリラーではありません。世のメディアにはやらせや再現ドラマ、劇的なニュースや番組、防犯カメラや車載カメラ、空撮などのリアルで映像がリアルタイムに溢れ、視聴者は椅子に座ったままそれを観て少なからず影響を受けています。果たしてそれが良い事なのかどうなのか、この映画はやさしく問いかけてくいるような気がします。

 冒頭に劇中劇のスタッフ、キャストのオープニング・クレジットに合わせインタビュー風のシーンが流れ、そこに生中継されているトゥルーマンのボケた独白が挿入されます。これが彼らの会話ともとれる構成になっており、物語の展開を予告するようなしゃれたオープニングになっています。

Christoph: We've become bored with watching actors give us phony emotions. We're tired of pyrotechnics and special effects while the world he inhabits is, in some respects, counterfeit. There's nothing fake about truman himself--no scripts, no cue cards. It isn't always shakespeare but it's genuine. It's a life.

クリストフ:俳優の作り物の演技にはいい加減、飽き飽き。派手な爆破シーン、氾濫するSFX、彼が住む世界もある意味、作り物だ。でも、トゥルーマン自身に嘘や偽りはない - 脚本もなければ、キュー・カードもない。シェイクスピアには及ばないが、それは本物の人生だ。

Truman: I'm not going to make it. You're going to have to go on without me. No way, mister. You're going to the top of this mountain, broken legs and all.

トゥルーマン:自信がない。僕抜きでやってくれ。くじけるな、山のてっぺんを極めるんだ。例え足を折っても。

Christoph: We find many viewers leave him on all night for comfort.

クリストフ:一晩中、彼を見続けるファンも多い。

Truman: You're crazy.

トゥルーマン:お前はいかれてる。

Hannah: You know that? Well, for me, there is no difference between a private life and a public life. My life...is my life, Is the truman show. The truman show Is... a lifestyle. It's a noble life. It is... a truly blessed life.

ハンナ:私は公と個人の生活を区別していないの。私の生活は私の生活。それがたまたま素敵なトゥルーマン・ショウなの。とても幸せよ。

Truman: Yeah, tell me something I don't know. All right. Promise me one thing, though. If i die before i reach the summit, you'll use me as an alternative source of food. Ew. Gross.

トゥルーマン:頑張るんだ。ひとつだけ、約束を。山頂前で遭難したら、僕の体を食っていい。うっ、気持ち悪い。

Lewis: It's all true. It's all real. Nothing here is fake. Nothing you see on this show is fake. It's merely controlled.

ルイス:全てが本物でリアルだ。この番組に作り物はない。単に操作されているんだけなんだ。

Truman: Eat me, damn it. That's an order. Maybe just Your love handles. I have love handles? Yeah. Little ones.

トゥルーマン:僕を食うんだ。命令だぞ。お腹の脂肪を。お腹に脂肪が?少しだけある。

 トゥルーマンが住んでいる町は、シーヘブンという天国のように綺麗で、ゴミひとつ落ちていない街です。フロリダのシーサイドという街で撮影されたものですが、ハリウッド映画のセットのように見えます。隣人も良い人たちばかりです。そこに「シリウス(おおいぬ座9番星)」と書かれたライトが落ちて来ますが、トルゥーマンはそれが何を意味するか、この時点ではわかりません。

 主人公の名前トゥルーマン(Truman)の起源は、「信頼できる男」という意味の中世英語です。作り物のような街で、作りものではない彼の物語が展開していくわけですが、この映画の多層構造を突き破って演じることができるのはジム・キャリー以外にいないと感じさせる素晴しいパフォーマンスです。一方、準主役とも言えるエド・ハリスも、番組のクリエーター兼エグゼクティブ・プロデューサーのクリストフを善人/悪人とは異なる軸で、見事に演じています。

 トゥルーマンの周囲の人々は生中継ドラマを演じる、いわば劇中劇の俳優です。ドラマの制作スタッフと視聴者のシーンを除けば前半のほとんどが「劇中劇」という構成になっており、これに映画の中の現実がオーバーラップして来るところが見どころです。

いずれも、映画の多層性と役者の技を感じさせる見応えのあるシーンです。

 ローレン・ガーランド/シルビアを演じるナターシャ・マケルホーンは目が魅力的な女優ですが、さして多くない出番でトゥルーマンと幸せになって欲しいと感じさせる、素晴しいパフォーマンスです。一方、メリル・バーバンク/ハンナ・ジルを演じるローラ・リニーは幾分地味な女優ですが、「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」(2000年)、「愛についてのキンゼイ・レポート」(2004年)、「マイ・ライフ、マイ・ファミリー」(2007年)と三度もアカデミー主演/助演女優賞にノミネートされた演技派の女優です。この映画では、劇中劇を演じきれなくなっていくハンナを見事に演じています。

 リアリティがこの映画のひとつのテーマになっており、ピーター・ウィアー監督は前半の劇中劇のシーンをほとんどを隠し撮り風に構成するという離れ業をやってのけています。さらに実際に映画館でこの映画を上映する際に、観衆をリアルタイムに撮影してカットバックで映画に挿入しながら上映するというアイディアもあったそうです。技術的な問題でこのアイディアは実現しなかったのですが、視聴者が望むリアリティとは、ある意味、共有と共感であり、ピーター・ウィアー監督は20年も前にそれを見抜いていたことになります。

 奇異な設定の映画ですが、描かれているのは真実の追求、脱出、裏切り、ラブストーリーといった普遍的な人間の営みです。ピーター・ウィアー監督の優れた演出と、ジム・キャリーらの突き抜けた素晴しい演技が、難しい設定の脚本を名作と呼ばれる映画に押し上げていることは間違いないでしょう。

ピーター・ウィアー

 シドニー大学を中退後、家業を手伝って得た金でヨーロッパに渡る。道中の船で番組を作って好評を得たため、映画作りに興味を持つ。帰国後シドニーのテレビ局での仕事を経て、映画製作会社へ就職。オムニバスのエピソードや短編を撮り、再びヨーロッパに渡り、74年の「キラーカーズ/パリを食べた車」で劇場長編デビュー。翌年の不条理サスペンス「ピクニックatハンキングロック」が話題となる。85年の「刑事ジョン・ブック/目撃者」が大ヒットして一躍注目される。その後も「いまを生きる」や「トゥルーマン・ショー」などヒット作を発表しつづけている。


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