Coffee and Cigarettes[2003]
監督 ジム・ジャームッシュ
脚本 ジム・ジャームッシュ
撮影 トム・ディチロ
フレデリック・エルムズ
出演 (STRANGE TO MEET YOU) ロベルト・ベニーニ、スティーヴン・ライト
(TWINS) ジョイ・リー、サンキ・リー、スティーヴ・ブシェミ
(SOMEWHERE IN CALIFORNIA) イギー・ポップ、 トム・ウェイツ
(THOSE THINGS'LL KILL YA) ジョー・リガーノ、ヴィニー・ヴェラ、ヴィニー・ヴェラ・Jr
(RENEE) ルネ・フレンチ、E・J・ロドリゲス
(NO PROBLEM) アレックス・デスカス、イザック・ド・バンコレ
(COUSINS) ケイト・ブランシェット
(JACK SHOWS MEG HIS TESLA COIL) メグ・ホワイト、ジャック・ホワイト
(COUSINS ?) アルフレッド・モリーナ、スティーヴ・クーガン
(DELIRIUM) GZA、RZA、ビル・マーレイ
(CHAMPAGNE) ビル・ライス、テイラー・ミード
きっかけは1986年「ダウン・バイ・ロー」の撮影を終えたジム・ジャームッシュが、ロベルト・ベニーニの素晴らしさに感激して即興的にニューヨークで撮影したことから始まった。コーヒーを飲み、煙草を吸う2人の男(ベニーニとスティーヴン・ライト)のコミカルなやりとりを描いた。短編だったというこのショート・ムービー集、独特のインディ・フィルム的な仕上がりで面白かった。
「ミニマルなスタイルを取りたかったから、ヴィジュアル的にもどんどん余分なものを省いて行くような方向性になったんだ」
とジム・ジャームッシュ自身が話しているように登場するのは、テーブルと椅子、そしてコーヒー(一話だけ紅茶)と煙草だけ。そこにはとりたててドラマがあるわけでなし、かみ合わない会話と微妙な「間」、そして気まずい雰囲気があるだけなのだけれど、登場する出演者たちの素なのか演技なのかすら分からなくなるほど肩の力の抜けた演技っぷりが素晴らしくて思わず見入ってしまった。トム・ウエイツとイギー・ポップが登場する「 somewhere in California 」など、そのほかのエピソードもそれぞれどこか心当たりがあるものばかりで、雰囲気だけではないアイロニカルな意図を感じ、少しだけレイモンド・カーヴァーの小説を思い出した。それにしても最後に登場するビル・ライスとテイラー・ミードによるエピソード「champagne 」で二人が20年代のパリに乾杯するのは何となく納得するものの、そのパリとともに70年代の後半のニューヨークにも乾杯した意図はどこにあったのだろうか。実はこの前、パートナーがあの頃ジム・ジャームッシュ、スパイク・リーらと同様ニューヨーク・インディペンデント・フィルムを撮っていた友人からたまたまメールを受け取り、そこには「きみがはじめてやって来た70年代の後半のニューヨークはもうどこにもありません」ということが書かれていたらしいが、つまりはそういうことなのだろうか。