CUBE[1997]
監督 ヴィンチェンゾ・ナタリ
脚本 ヴィンチェンゾ・ナタリ
グレーム・マンソン
アンドレ・ビジェリク
出演 モーリス・ディーン・ウィント
ニッキー・グァダーニ
ニコール・デ・ボア
ウェイン・ロブソン
デヴィッド・ヒューレット
アンドリュー・ミラー
ジュリアン・リッチングス
音楽 マーク・コーヴェン
撮影 デレク・ロジャース
スコット・スミス
おかしいとこだらけな映画。設定はこんな感じです。
・突然さらわれて来た人たちが立方体のからくり部屋に閉じ込められる。(SAWに似た設定。ただ
し、SAWより前に作られています) ・からくり部屋は3Dに配置された26×26×26=17576個の部屋から構成され、出口はどこかわからな
い。 ・トラップのある部屋に間違って入ると装置によって殺される。 ・のちにトラップの部屋がどんな部屋なのかは部屋にかいてある3×3=9桁の数字に隠されていること
を知る。
部屋番号が「123 234 345」のように書かれているが、終盤で、主人公達はからくり部屋の部屋番号の解読のカギが「素数」であることを知る。そこで、書かれた部屋番号517という数字を見て、数学が得意な女の子が素数かどうか判別するシーンがある。数字をみて1秒もしない間にこう言います。 「517は11かけ47だから素数じゃないわ」 早い…しかし、その数字を素因数分解しないといけない状況になるとこう言います… 「3桁の数字を素因数分解できる人なんていないわ!」 「天文学的数字よ!!」 といって絶望のふちに立たされます。さっき一瞬で素数計算してたのに。素数とはそれ以上割れない数字。つまり、それを調べるには何かで割ってやればいいわけです。 3桁の数字で最高なのは999。 31 × 31 = 961 32 × 32 は1000を超えるら最高で31通りの割り算をすれば答えは自然と出てくるはず。素数計算では奇数を2で割ることはできないし、下一桁が0, 5以外の物を5で割ることはないから、実際には31回も割り算を確かめる必要はないです。また、百の位と1の位の和が3の倍数でなければ3では割り切れない。例えば、911とかは見ただけでどんな数字でも割りきれないことがわかる。だから、暗算でも絞り込めるわけで、計算しようと思えば意外と誰でも3分もしないで計算できる。彼女は数学が得意なんだから1分もかからないだろうと思うのだが… 次に、頭に障害があるけどめちゃくちゃ数学が出来る青年が出てくる。彼は、素数かどうかの判別は出来るけど素因数分解はできない。どうやって判別するんだ。 「434を14で割ると26だ」
というシーンがある。31だよ。26に14かけたら434にはたらなそうだとわからないのか。それからも、どんどんおかしいところが出てくる。 「384の素数は0個よ」 「563の素数は2個よ」 「911の素数は3個よ」 384は偶数です。したがって必ず2で割れるから1つ以上ある。563は素数です。よって1つしかありません。911なんかぱっと見て何でも割れないことがわかるでしょうが。
まだまだある。17576個の部屋は一つ一つが独立して全て移動しているそうです。しかし、端以外全てに上下左右に部屋が隣接している。ここで、ルービックキューブを思い浮かべると、立方体の各部屋が3x3x3個隙間なく入っている感じなのがわかる。この設定の部屋もそんな感じで26x26x26隙間なく詰め込まれてるわけですが、どうやったら独立して好きな方向に動くことができるんだろうか。2つの部屋が別方向に動いていた場合、移動するときに体が挟まれてちぎれちゃうよ。 「移動の仕方によっては独立しては無理だが、部屋の移動は出来るんじゃないか?」 と思うかもしれません。部屋の移動は決まった計算式にのっとっているらしい。だから、計算すれば次に自分の部屋がどこに移動するかわかるらしい。明らかに、口で言ったのを聞いただけでは計算出来ない計算式にして視聴者を騙す戦法です。計算式はむっちゃくちゃなのに視聴者はパッと計算できないのでそれっぽく聞こえるわけです。 あらためて、部屋は縦26個、横26個、鉛直26個の構造で出来ているから、(x,y,z)座標で表します。 実際の部屋の番号は(345,623,829)のように書かれている。これの各数字を文字に置き換えると、現在いる部屋の座標は全て (a+b+c, d+e+f, g+h+i) となる。これが移動後には例えば
(2a+c, 2d+f, 2g+i) といった感じの座標になる。3Dに配置された全ての部屋が全て不規則に移動するためには、1回全部屋をばらばらにしないといけません。ルービックキューブのような、そんな隙間の無いキューブ状の部屋で、例えば中央の部屋を端の部屋まで移動するためには1回移動に関係する部屋を外に出してやらないと無理です。しかも、この移動は全部屋がさっきの計算式のように移動する。1回ばらばらにしないと無理です。 座標(a+b+c, d+e+f, g+h+i)にある部屋は次に、座標(2a-c, 2d-f, 2g-i)になるから全ての部屋が動かなければならない。だが、部屋が移動するシーンでは 「どこか遠くで部屋が移動している音がするわ」 お前の部屋も動いてるはずだ。 (abc , def , ghi) 例:(153 , 238 , 983) の座標を (a+b+c, d+e+f, g+h+i)
とし、次に移動する座標を (2a+c, 2d+f, 2g+i) とするシステムだそうだ。中央の値(bとeとh)が計算に関係ないから移動後に複数の部屋が同じ座標になってしまう組み合わせもありえてしまう。 例: (112 , 224 , 336)
の移動後は (2×1+2 , 2×2+4 , 2×3+6)
(172 , 254 , 356)
の移動後は (2×1+2 , 2×2+4 , 3×2+6) いずれも同じ場所
(4,8,12) 物理的にこんなことあるわけない。また、部屋が移動するシーンはエレベータのように一つの部屋が移動するシーンが描かれている。しかし、 (a+b+c, d+e+f, g+h+i)
で表される座標の部屋が、次に移動する座標 (2a+c, 2d+f, 2g+i) は全ての部屋が移動することを意味するから1つの部屋だけが移動するのはおかしい。全ての部屋がx,y,z方向全ての方向に移動するはず。しかも1本のレールの上を1つの部屋が移動するシーンしかない。それならどうやって全ての部屋が移動するのか。最後のシーンで 「急いで!!次の部屋の移動で部屋が出口につながるわ!!」 まるで今回の機会を逃したらもう何年もこの組み合わせにならないかのような言い方です。ここで部屋の移動システムを思い出すと、一見難しそうな設定にしているが簡単なんです。 (a+b+c, d+e+f, g+h+i) の座標は次の移動で3つの数字の和に、違う2つの数字の差を足したものになる。 (a+b+c, d+e+f, g+h+i) にある座標は次の移動で (a+b+c, d+e+f, g+h+i) + (a-b, d-e, g-h) = (2a+c, 2d+f, 2g+i) になるわけです。次に移動する時も同じ計算式だから、これを同じ要領で計算すると (2a+c, 2d+f, 2g+i) + (b-c, e-f, h-i) = (2a+b, 2d+e, 2g+h) さらに次の座標は (2a+b, 2d+e, 2g+h) + (c-a, f-d, i-g) = (a+b+c, d+e+f, g+h+i) 3回移動したら元の座標(a+b+c, d+e+f, g+h+i)になります。つまり何回移動しようが3回移動すると元の位置に戻ってくるんです。だから 「急いで!!次の部屋の移動で部屋が出口につながるわ!!」 なんておかしいわけです。常に部屋が移動しているのなら最高でも2回部屋が動くのを待てば出口に つながるわけよ。
最後の最後にも矛盾があります。出口は一番はしっこにあるそうです。つまり(999 , 999 , 999)にある。ここでまたシステムを考えると (2a+c, 2d+f, 2g+i) にある座標は (a+b+c, d+e+f, g+h+i) + (a-b, d-e, g-h) = (2a+c, 2d+f, 2g+i) に移動するから (9+9+9 , 9+9+9 , 9+9+9)
の部屋は (9×2+9 , 9×2+9 , 9×2+9)
に移動します。移動した後も座標は (9+9+9 , 9+9+9 , 9+9+9)
と同じ場所。何万回移動が行われても永遠にこの出口の部屋は静止している。つまり移動後の部屋の扉が出口になるという組み合わせは一生起こりません。。 「数学の専門家に原作を依頼した」 と公式サイトに書いてあるがとても信じられない。映画の矛盾とかおかしいだろこれってところは結構多くあるんですよ。何かの賞をとってるような有名な映画であっても。そういったところを見つけるのも楽しい。低予算で一つの部屋を色を変えて撮影しているのですが、映像表現的にはとてもいい作品だと思います。