夢[1990]
監督 黒澤明
本多猪四郎
脚本 黒澤明
出演 寺尾聰
倍賞美津子
原田美枝子
根岸季衣
自らの見た「夢」をモチーフとして短編8作品を自身の歴史として紡いでいった作品集であり、後期の黒澤明らしい審美的な映像美で満たされた作品に仕上がっています。ただ単に八本の短編を羅列しただけではなく、自身の幼少期の思い出から青壮年期の葛藤、そして老境での達観までを描いています。同じような「夢」や「妄想」を描いた映画としては、フェリーニの『8
1/2』があり、あの作品では追い詰められていくフェリーニの自伝のような作品となっていますが、この作品では「夢」が黒澤明の老境での落着いた回顧録として我々に提示されています。掛かりすぎる経費のために、惜しくも撮影されなかった幻の残り三作品である『飛ぶ』、『阿修羅』、そして最終話となるはずだった世界平和の話である『素晴らしい夢』が映像化されていれば完全な「夢」が完成していたはずなのでそれがとても残念です。