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Scarface[1932]


 ハワード・ホークス監督の1932年の作品であり、フィルム・ノワールの傑作。その後のアクション作品に使われたと思われるシーンや設定が次々に出てきます。センス溢れる美しい写真、テンポが良く無駄なシーンの無い展開、台詞でなく映像で人間の強欲と愚かさを見せつけるカメラの動き。モノクロ映像がギャング物に最適だということを改めて気づかせてくれる作品です。  この作品は1932年という製作年度から見ると、時代劇というには新しすぎていて、どちらかというと東映の実録物のような感覚で撮られたものと思います。つまり当時の社会の暗部をえぐるリアリズム、それも裏社会物の代表がこの作品だったのだろう。実際オープニングのテロップでは、このようなマフィア達の跋扈を許しているアメリカ政府に向けて、猛烈な批判が浴びせられています。また、実話を元に脚色されたこの作品の持つリアリティーはちょっとした会話や小道具に感じ取ることが出来ます。  リー・ガームスによる撮影は絶品で、この映画の暴力シーン、銃撃戦、クライマックスシーンは美しい映像とモンタージュの宝庫であり、劇的で、モノクロの良さが完全に発揮されています。構図も個性的で美しく、場面転換のやり方もとてもスマートかつリズム良く行われるために、見る者は作品に没頭できます。  象徴的な「X」の傷とその他のシーンで使われる、スカーフェイスの仕業であることを暗示する「X」の模様、同じく成功と凋落のシンボルとなった「The World is Yours」のネオンサイン。影だけで殺人の進行を伝えるシーン。ボーリングのピンで死を暗示するシーン。観客に対して言葉で語らず、映像で意味を暗示して語っていく演出は素晴らしいです。上映時間も93分と集中するにはちょうど良い時間です。


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